MAIA

ブロックチェーンとはいったい何か?

ビットコインの止め処ない価格上昇は、疑いの余地無く、ブロックチェーン革命の焦点である。自然なことだが、マスメディアによる広範な報道はビットコインの価格が今年に入って爆発的に上がってからだった。3月終わりに1,000ドル以下だった価格が今月には7,500ドル近くにもなっている。ただし、「投資家」が手っ取り早く濡れ手で粟の利益を得ようとするがゆえに、ビットコインへの関心や興味はその価格の上昇への過熱した妄執へと変質してしまった。多くの人々は基礎となっている「ブロックチェーン」という技術を耳にしたことすら無く、ビットコインが実際のところ「暗号通貨」であることも、その存在が「マイニング」に支えられていることも、暗号通貨売買のトレードが「デジタル通貨取引所」で出来ることも知らないのだ。

では、こうしたこと全てを知っておく必要があるのだろうか?

それは、場合によりけりとしか言えない。暗号通貨が広く受け入れられるにあたっての最大の問題の1つは、他の複雑な事柄と同じく、誰しも自らが理解できないものは怖いということである。だが、携帯電話が何故機能するのか分かっていなくても、誰も気にすることなく使い続けている。そして、そこが重要な点なのである - 皆が使っているのだ。皆、携帯電話は便利だから使う。そして何故機能するのかと疑問を持ったりはしないのである。

 

ブロックチェーンは未だその段階には達していない。これまでのところ新し物好きだけがブロックチェーン技術を受容している。主として、その潜在的可能性に気づいた先見の明のある人々とプログラマーたちである。こうした人々はブロックチェーン技術の開発に忙しく、この技術の価値を説得してまわったりはしていない。彼らは、見せることが語ることよりも効果的だと信じているのだ。

 

列車というものを初めて見た時、人々は恐れおののいた。不審にも思った。この不審さは、疑念の原因となった。それが、ブロックチェーンを取り巻いている疑念と同じものなのだ。これまでの古いシステムから大きな利益を得ている、影響力のある、メインストリームの人々は、この疑念を利用してブロックチェインにとって問題となる状況を引き起こそうとしているのである。

 

だが、同時に、世界にはブロックチェーンの着想とそれがもたらす変革を認めている人々もいる。少し時間を費やしてこの技術の利点を理解し、どのように機能するのかという基礎だけでも理解してみても良いかもしれない。

ブロックチェーンそのものよりも解説を始めるのに適している事柄はあるだろうか? 答えは明らかなように思えるかもしれないが、大きな利益を得ようと急上昇の後の売り時を探っている多くのビットコインの投資家たちは、この段階にすら到達していないのだ。

 

本来ならもっと明快なはずなのだが、「ブロックチェーン」という用語自体はこの段階ではあまり有用ではない。そこで、ブロックチェーンという言葉はいったん脇に置いておこう。大人数のグループを思い描いてみる方がずっと役立つ。ヒッピーの生活共同体のように一緒に暮らしている人々である。

 

100人のヒッピーたち

この生活共同体には、HUGSと呼ばれる独自の通貨があると仮定しよう。HUGSは他の通貨と何ら変わりがないが、2人のヒッピー間のあらゆる取引は共同体全員の見ている目の前で行われなければならないという点だけは異なっている。実際には、病気のヒッピーや休暇で旅行しているヒッピーもいるかもしれないので、全100回の取引中99回は全員に目撃されているといった具合になる。

 

この方法で得られるのは、完全な信頼の仕組みである。例えば、ヒッピーのアレクサがヒッピーのブロンディに3 HUGSを支払ったとしたら、共同体全員がそれを記憶し、アレクサとブロンディの間の収支を知ることになる。これは、ヒッピーが非常に正直な人々であるが故に機能するわけで、この生活共同体内で巨額の詐欺事件が発生することを危惧する必要は無い。

さて、ブロックチェーンはもうほんの少し技術的だが、基本概念としてはこれよりずっと複雑だということは無い。ヒッピーをネットワークとコンピュータに置き換えて、どうなるかを見てみよう。

 

ヒッピーは、ヒッピーらしく、全世界に散らばっているとする。それぞれのヒッピーはブロックチェーン・ネットワークの「結節点」なのだ。面と向かって信じ合う代わりに、ヒッピーたちはコンピューターという金属の箱を信頼する。

 

ブロンディがシャーリーンに5 HUGSの支払いをしたいとする。ブロンディは、その支払いをブロックチェーン暗号通貨プログラムを通して送金する。このやり方は、生活共同体でHUGSを交換していた時とまったく同じ様に機能するのだ。

 

あらゆるヒッピーが、ブロンディとシャーリーンの間のその取引の知らせを、自分の「公開分散型台帳」で受け取る。公開分散型台帳はグループ内の全ての取引をデジタル記録として保持するのだ。また、このやり方ならば、一々取引を承認する必要もなく、ヒッピーたちはかなりのんびりできるのである。十分なHUGSが無ければ、支払いをすることはもちろん出来ない。すべてのヒッピーが全く同じ公開台帳を持っていることを知った上で、いつでも好きな時に自分の公開台帳を参照することができる。そういうわけなので、世界のどんな辺鄙な片隅に居ても元の生活共同体に今でも居るかのように、ヒッピーたちはヒッピーらしくリラックスすることが出来るのだ。

譬え話の細部の作りこみをもっとしたいところだがここで止めておこう。これがブロックチェーンがどのように機能するかについての最低限の概念的知識である。架空のHUGS暗号通貨を使い、ブロックチェーンについて考えてみた。ヒッピーたちにとって、HUGSは機能する。HUGSがやるべきことをやるからだ。この仮想通貨は現実と同じように信頼関係を構築する。そして、おそらくはそれ以上のものをもたらしてくれるのだ。