MAIA

IT先進国アルメニアのブロックチェーン企業に学ぶ!

こんにちは! DMMスマートコントラクト開発部のマルシオです。

スマートコントラクト事業部では鋭意スマートコントラクトなプロダクトを開発中!
トライアンドエラーを繰り返しながら最新情報に目を光らせ、日夜、ブロックチェーン、スマートコントラクトの知見をアップデートしています。
特に海外からの情報はめまぐるしいスピードで刷新されており、生の最新情報を得るために国外企業へのヒアリングも行っています。

海外のIT先進国というと、北欧諸国をはじめ、電子政府やe-Residencyで有名なエストニアが思い浮かびますが、実はエストニアのお隣りのアルメニアにはブロックチェーン関連企業が多く集っています。

今回の記事では、アルメニアのIT企業『MAIA』の代表であるティグラン・ポゴシャン氏に伺った、アルメニアのIT事情と、ブロックチェーン業界の展望についてお届けします。

 

アルメニアってどんな国?

 

『MAIA』はブロックチェーンエンジニアを多く擁するIT集団。

P2P分散型オンラインメディア「PUBLIQ」の開発をはじめ、さまざまなブロックチェーンサービスに携わっています。

ティグラン氏「IT先進国としてイスラエルや隣国のエストニアが知られていますが、アルメニアでも、手続きや支払いはオンラインで数分で完了するシステムが整っています。ビザ、リーガル、その他の役所関連の手続きもすべてオンライン化されていますし、不動産やその他の権利関係もデータベースに登録されているので、生活の諸手続きは非常に効率的です。国家としてのナンバー1セクターは間違いなくIT。政府レベルでIT分野の活性化に取り組んでいるので、ITの投資が集まる環境を目指していますし、国全体がITフレンドリーですね」

マルシオ「ITが育つ土壌には、どんな背景があるんですか?」

ティグラン氏「アルメニアには数学の国として古い歴史があり、数学の教育には非常に力を入れています。幼児から13~14歳までの子どもたちが無料で自由に使えるアフタースクールのプログラム『TUMO』では、プログラミング、webデザイン、ゲーム開発、ロボティクス、モーショングラフィックなど、14種類の多様なプログラムを学ぶことができます」

 

チェスは義務教育

 

ティグラン氏「特徴的だなと思うのは、チェスが義務教育になっていることですね。先を読んで戦略を立てながら、目の前の問題を解決する。チェスにはさまざまな能力を養う要素が詰まっているんです」

マルシオ「チェスは“考えるスポーツ”と言われるほどですから、それだけ頭脳を駆使するということなのでしょうね。小さい頃からそんな環境にあれば、鍛えられるのも納得です」

ティグラン氏「ITのベースは、数学とコンピューターサイエンスです。ブロックチェーンという技術自体はそこまで難解なものではなく、数学とコンピューターサイエンスの基礎的な知識さえあれば、覚えも当然早い。基礎能力や経験があれば身に付けやすいので、そういう意味でアルメニア人との親和性は高いのかもしれません」

 

生き抜くために知識が必要だった

ティグラン氏「国民性、歴史的背景に基づく国民のメンタリティも大きいですね。イスラム圏に囲まれている地理的環境に加え、アルメニアには自然資源がない。海に面していないため、貿易的にも不利な状況を強いられてきました。そんな環境の中で生き抜くために、知恵を絞り、知識を身につける必要があったんです」

マルシオ「確かに、知識があれば渡り合っていけることは多いですよね。資源がないという意味では日本にも同じことが言えますが、ある程度まで成長しきって豊かになってしまった日本では、そのメンタルは少なくなっているかもしれません」

ティグラン氏「小学生の頃を振り返ると、『成績が悪い』というのは格好の悪いことでした。数学のグレードが悪いと恥ずかったですから」

マルシオ「私も一児の母で小学生の娘がいますが、それは日本の小学生には希薄な感情かもしれません……!」

 

ティグラン氏「日本と大きく異なるのは、ベンチャーのマインドセットがあることでしょうか。能力というより、新しいことを自ら考えて形にしようとする気持ち、行動力、スピードにかなり長けているのがアルメニア人の特長だと思っています」

マルシオ「ブロックチェーン、スマートコントラクトの業界についてはどうお考えですか?」

ティグラン氏「今まさにスタートを切ったばかりの業界で、今後どうなるかは見えないところはたくさんあります。技術としては素晴らしいものですが、どう発展していくのか予測できないところはもちろんたくさんあります。社会的な理解度はまだまだ低いですし、エキスパートにもその可能性は読めません」

マルシオ「多くの人が語るように、これはまさに、インターネットを取り巻く90年代のようなものですよね」

ティグラン氏「世界の距離を縮めたことがインターネット最大の革命だとすると、ブロックチェーンの革命は“信用の革命”と言えるでしょう。これまで必要だった信用を不要にするテクノロジーです。今まで頼ってきた第三者である中間業者が不要になる。アマゾンを信用して売買していたものが、直接の取引が可能になるんです。金融、EC、さまざまな分野で使われる技術になるのは間違いありません」

 

ティグラン氏「信用の逆説的な現象として、ICOでは詐欺まがいなことも起きています。今はその黎明期であり、過渡期ともいえるので、本当に必要とされるブロックチェーンビジネスだけが生き残るでしょう」

ティグラン氏「スマートコントラクトは一度コントラクトに書き込んでデプロイしてしまえば、簡単には変えられないという機械的な側面があります。人間と機械をうまく調和させるのはとても難しい。例えば、緊急事態やイレギュラーなケースにどう対応するべきか、スマートコントラクトのフレキシブルではない部分はこれからも課題として取り組まなければならないでしょう」

マルシオ「確かに、生活には予想外なことがたくさんあります。社会や人びとの暮らしにスマートコントラクトを浸透させるには、まだ少し時間がかかりそうですね」

ティグラン氏「テクノロジー自体がどう進化するのか。新しいテクノロジーを活用する企業が生まれ、その先にどんな社会が実現するのか。ブロックチェーンにはインターネット同様のポテンシャルがあるから、次のグーグルやマイクロソフトのような企業が出てきてもおかしくないですし、そんな未来を見るのが楽しみですね」

 

朝起きたら世界が変わっているかもしれないブロックチェーン業界

アルメニアの教育、そして国民性から、IT、コンピューターサイエンスに長けている実情が伺えました。

ティグラン氏の仰る通り、ブロックチェーン、スマートコントラクトの分野は未知の領域で、朝目が覚めたらアッと驚くようなニュースが飛び交う、スピードの早い業界でもあります。

だからこそ、最新の知見と業界の動向をキャッチしながら、独自の価値を提供する醍醐味もある事業だな、と改めて明日の仕事にワクワクしたマルシオでした。